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AutoCADを使ってP&ID図面から計装シンボルの内容を集計、管理したいと思ったことはありませんか?
そんなときは「材料集計用ダイナミックブロック」を作成することをおすすめします。

調達のための計装シンボルの集計作業が自動化できれば設計工数を大幅に削減できて利益率が上がります!
そこで今回は、電気計装エンジニア向けにAutoCADを使って「材料集計用 計装シンボルの作成方法」を解説します。

今回の記事を見ることで計装シンボル情報を集計したり、管理できるようになります。
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今回は計装記号の情報を抽出するためのダイナミックブロックを作成します。
その前に計装記号とは何かを簡単におさらいしましょう。
計装記号は温度計や圧力計、液面計などに取り付けられている計器情報を図示化したものです。

計器情報には「計測方法、制御方法」と「機番、ループ番号」が含まれます。
上の図で説明をすると、「PI」は”Pressure Indicator”の略で圧力計を意味しています。他にも「TE(温度計)」や「LIT(液面計)」など制御方法によって文字が決まります。詳しくはこちらを参照してください。
また、ループ番号は「101」としています。数が増えると102, 103…と増えていきます。番号はエンジニアが自由に付けて行きます。
図形にも意味があります。インジケーターや計器盤、DCSなどの制御システムに組み込まれているものなども表せます。以下の図を確認してください。

プラントエンジニアの電気計装担当者はこれらのシンボルをP&ID図面からチェックをして、手作業で拾い上げて、管理をして発注をしなければいけません!
数が非常に多く、間違いが許されません。そこで今回もダイナミックブロック化をして集計できるようにまとめていきます。
以前にP&IDの集計方法やバルブを集計するためのダイナミックブロックを紹介しました。まだ読まれていない方は以下の記事を参照してください。
ここではダイナミックブロックの「可視性」という機能を使って複数のシンボルを一つにまとめていきます。
まず、動きのないシンプルなブロックを作成します。

ブロック化されていないインジケーターの要素をすべて選択します。
コマンドラインから「COPYBASE」を入力します。基点を指定するよう求められるので、円のセンターに指定します。

コマンドラインから「PASTEBLOCK」を入力してブロックを張り付けましょう。これでブロックが完成しました。
※すでにインジケーターのダイナミックブロックがある場合はそちらを使ってください。
先程作成したブロックに可視性を追加していきます。

作成したブロックを選択し、右クリック>ブロックエディタを選択します。

ブロックオーサリングパレットから、パラメータ>可視性を選択して、可視性を好きな位置に配置しましょう。
可視性が配置されると「可視性1」というパラメータが自動で作成されます。ダブルクリックをして中身を確認します。

「可視性の状態」画面が立ち上がりました。可視性の名前を設定できるので、名前変更から好きな名前に変更してください。今回は「インジケーター」としています。
OKボタンをクリックしてブロックの「可視性の状態」を確認すると先程設定した名前の状態が作成されました。
同様に可視性を追加していきます。

「可視性1」をダブルクリックして「可視性の状態」画面を立ち上げます。
新規作成で新たな状態を作ります。まずは可視性の状態名を入力します。今回は「ローカル計器盤表面」としました。
新規の状態に対する可視性オプションを「すべての既存オブジェクトを新しい状態で非表示」にチェックしてOKをクリックします。

ブロック作成画面に戻って「可視性の状態」を見ると先程作成した「ローカル計器盤表面」が新たに追加されました。選択して中身を見てみましょう。
最初に作成した「インジケーター」のシンボルが薄く表示されています。この状態で「ローカル計器盤表面」のシンボルを作図します。
「インジケーター」のシンボルには文字が入っていますが、新しく作る可視性の状態では文字を追加しないようにしてください。

「インジケーター」のシンボルが薄く表示されていて作図するのに邪魔だと感じた場合があると思います。
可視性の状態に「表示切替アイコン」があるのでダブルクリックをすると切り替えられます。覚えておきましょう。
追加した可視性がうまく動くかテストをします。
リボンから、ブロックエディタ>ブロックをテストでテスト画面を立ち上げます。

可視性ボタンをクリックすると状態を選択できるようになります。
「ローカル計器盤表面」を選択すると図面が切り替わりました。
また、文字はインジケータにしか入れていないので入っていません。
このままだと文字が出てこないので使えません。ですが、属性を追加することですべての状態で文字が見られるように修正していきます。
計装記号に属性を設定して「機番」や「ループ番号」を加えていきます。属性を追加する前にほかにもたくさんの計装記号があったので可視性の状態に追加していきましょう。

全部で8種類になりました。他にも計装シンボルがありますし、各社内で標準化されているシンボルなどもあるので臨機応変に設定していきましょう。
まずは「機番」と「ループ番号」を属性に追加します。
※ここでは「機番」を「タグ」として扱います。

ブロックに直接文字を書き込むと文字が変更できません。
「タグとループ番号」はすべて違う値をとるので文字が変更できるように属性を追加する必要があります。

リボンから、挿入>属性定義を選択します。
属性定義画面が立ち上がりました。名称を設定しましょう。今回は「TAG」としています。
モード欄にチェック項目がたくさんありますが、今回はすべてチェックを外してください。
設定が完了したらOKで先に進みます。

先程設定した「TAG」属性を挿入します。
「インジケーター」の状態で設定していた文字(※※)を消して属性を挿入します。

次は同様にしてループ番号を定義します。
属性定義画面が立ち上げて。名称を設定しましょう。今回は「LOOP_NO」としました。
設定が完了したらOKで先に進みます。

先程設定した「LOOP_NO」属性を挿入します。
「インジケーター」の状態で設定していた文字(※※※※)を消して属性を挿入します。
「タグ」と「ループ番号」が属性に追加されたので、正しく動作するか確認をします。
リボンから、ブロックエディタ>ブロックをテストでテスト画面を立ち上げましょう。

ブロックを選択しプロパティ欄から属性をチェックします。
属性の中に先程設定した「TAG」と「LOOP_NO」が追加されています。
値をそれぞれ「TE」と「101」と設定するとブロックに入力内容が反映されました。大成功!
属性の場合はすべての可視性の状態で適用されます。可視性の状態を切り替えても値が変わっていないことを確認しましょう!
※プロパティが表示されていない場合はリボンから、表示>オブジェクトプロパティ管理をクリックしましょう。
次に可視性の状態「インジケーター」「ローカル計器盤表面」などの情報を属性へ渡します。

リボンから、挿入>属性定義をクリックして属性定義画面へ移動します。
モードを「非表示」に設定し、名称を設定します。今回は「TYPE」としました。
次に既定値欄よこにあるアイコンをクリックして属性情報の値を読み込みます。

フィールド画面が立ち上がりました。
フィールド分類を「すべて」から「オブジェクト」へ変更します。

フィールド名を「ブロックのプレースホルダ」を選択します。
ブロック参照のプロパティを「可視性1」に設定してOKボタンを押します。

属性定義画面に戻ると既定値欄が「VisibilityState」となりました。
OKで先に進むと属性の挿入をします。今回は「非表示」としているのでどこに挿入してもOKです。
これで可視性の値が属性へ反映されるようになります。
「可視性の状態」を属性に追加できました。正しく動作するか確認をします。
リボンから、ブロックエディタ>ブロックをテストでテスト画面を立ち上げましょう。

可視性の状態を切り替えてプロパティ欄の属性を確認すると「可視性1」の値と「TYPE属性」の値が「ローカル機番内部」になっています。
シンボルも「ローカル機番内部」になっているので、可視性の状態を属性に反映できました!
属性の値が反映されない場合や不具合がある場合は「属性のよくあるつまづきポイント」を参照してください。
これまで作成したブロックでも材料集計ができるようになりますが、さらに集計しやすくするようにします。
ここでは「ファイル名」と「集計区分」を新たに設定します。
「ファイル名」が分かればどの図面の情報なのかが一目でわかり、管理がしやすくなります。
「集計区分」は他のダイナミックブロック(バルブや流量計)と区別をするために追加します。
計装シンボルがどのファイルのものなのかを知るために「ファイル名」を属性に追加します。

これまでと同様にリボンから、挿入>属性定義をクリックして属性定義画面を立ち上げます。
モードを「非表示」にして名称を設定します。今回は「FILE」としました。
規定値よこのアイコンをクリックして属性の値をファイル名とリンクさせます。

フィールド画面が立ち上がりました。フィールド分類を「ドキュメント」に変更します。

フィールド名を「ファイル名」にしてファイルの表示を「ファイル名のみ」にチェックを入れます。
OKで先に進み、ダイナミックブロック上に属性を配置しましょう。
今回もモードが「非表示」なのでどこに挿入してもOKです。
計装シンボルを他のダイナミックブロックと区別するために「集計区分」を属性に追加します。

これまでと同様にリボンから、挿入>属性定義をクリックして属性定義画面を立ち上げます。
モードを「非表示」にして名称を設定します。今回は「SECTION」としました。
既定値には値を直接入力します。今回は「計装記号」としました。
ダイナミックブロック上に属性を配置しましょう。モードが「非表示」なのでどこに挿入してもOKです。

ファイル名と区分情報が正しく入っているかを確認します。

作成したブロックを選択してプロパティから属性を確認するとSECTIONに「計装記号」が入力されています。
また、今回は「ダイナミックブロック_計装記号設定」というファイル名になっています。FILE属性にも同じ内容が入力されています。大成功!

画層を変更すれば色を変えることができるのでご自由にカスタムしてください。
このダイナミックブロックを使用すれば計装記号の材料集計作業を自動化できるようになります!
今回はAutoCADで計装記号の材料集計用ダイナミックブロックの作成方法を説明しました。
- 計装記号は種類が多いので可視性を使ってシンボルを一つにまとめる
- 「タグ」「ループ番号」「種類」「ファイル名」「区分」を属性に追加
- 画層やシンボルを社内の標準に合わせて業務効率化する
計装記号は種類が多いため、ひとつひとつをブロックで作成せず「可視性」を使ってシンボルを一つにまとめてしまいましょう。
計装記号を集計をするためには「タグ」「ループ番号」「種類」の3つが少なくとも必要です。
追加で「ファイル名」「区分」を設定しておくと、どの図面にどの計装記号があるかすぐにわかったり、集計作業が楽になります。
画層の変更やシンボルの変更は社内の規定に沿ってカスタム可能です。
今回のダイナミックブロックは非常に高度な内容なので、何度も記事を見直して社内標準シンボルを作って業務効率化を進めましょう!
以上、Kotaroでした。